2013年5月3日金曜日

いわし亭部長の Net Radio Station ~イカロスの失墜 日本マドンナ 解散に寄す


第10回目 テーマ:『 イカロスの失墜 日本マドンナ 解散に寄す 』


フランシーヌ千里です。ご無沙汰しています。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
いわし亭部長のリアルな音楽ライフについてインタビューする “ いわし亭部長の Net Radio Station”。今回は、日本マドンナ 最後のライヴについて、いわし亭部長に聞きます。

日本マドンナが解散すると聞いてから、いわし亭部長は大層落ち着かない様子。気持ちがもう、そこにしかいかないという感じでした。それもそのはずで、いわし亭部長曰く

“ 日本マドンナは日本マドンナのみなさんが感じておられる以上に、稀有な存在のバンドだ ” 
“ 彼女たちにとって、音楽はそれをしなくては生きていけないというもの。彼女たちが生きることそのものと直結している。音楽はそれほどまでに切実なものなのだ ” 
“ そんな姿勢で音楽をしている人は、果たして今、どれだけいるのか? たとえ、多くに認められずとも、そして続けることが大変でもぜひ、続けてほしい ”

と、私は常日ごろ聞いていたからです。

さて、前置きはこのくらいにして… 最終ライヴについての報告です!







日本マドンナ名義のツイッターから公式に発信された情報には、ライヴ当日までに以下のようなつぶやきが綴られていた。

日本マドンナ ‏@nihonmadonna 4月23日
明日はいよいよ最後のライブです。来る方は気をつけてお越しください。チケットは有難いことに完売致しました。有難う!!!当日券もありませんので御注意ください。

日本マドンナ ‏@nihonmadonna 4月23日
今日はさとこ誕生日!!!!!20歳本当におめでとう!!!


日本マドンナ ‏@nihonmadonna 4月24日
ライブ来てくださったかた、日本マドンナを聞いてくださった方有難うございました!ファックフォーエバー!!!!!!!!!!!!!
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ギターのまりなのブログには現在、以下のように書かれている。

2013/4/24
end
もう立ち直れないんじゃないかと思うくらい気が滅入る
ゲームオーバーになった後にさらにもう一撃食らったような
不意の一撃をくらった
でもこんなことはもう言ったって「残念だけど仕方のない」ことです。


昨日は本当に沢山の人が来てくれて嬉しかった。
夢のような気分でした。本当に、一人一人に礼を言いたい気分だった。
私は昨日珍しく真っ白のワンピースを着た
なんだかそんな気分だった。
手紙やら差し入れやら、本当に有難うございました。
有難うございました、自分で言っていて本当にからだに染み渡るような気分です。
日本マドンナをやることでいろんな人に出会えて、話せて良かったと思います。
私自身、当然のことながら音楽は続けるので
いつかまたどこかで出会えるようにがんばりたいと思います。

私は小学生のころから本が好きなのと、パソコンが趣味だったせいで
文章にすると雄弁で、実際人を目の前にするとなかなか適当な言葉が出てこないので
こうしてブログを書いて自分の言葉を目で確認することが
どこか心地が良かった気がするし、少し不気味であった気もします。
付き合ってくれた人は本当に有難うございます。
日本マドンナとしてこのマイスペースでブログを更新するのは最後ですが
日本マドンナを聴いてくれた人たちが素晴らしい日々を送れるようにと
超個人的な感情で思っています。
本当にありがとうございました。
抱きしめるズもファンシーマルコポーロもありがとう。


まりな
11:27 午後
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太鼓の達人 さと子のツイッターには現在、以下のように書かれている。

さと子 ‏@nm_satoko 4月24日
ファンシーマルコポーロ、抱きしめるズ、紅布、来てくれた方、来られなくても応援して下さってた方、ありがとうございました。日本マドンナ最後のライブ、やり遂げました。画像はファンシーマルコポーロからです!



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ベースとヴォーカルのあんなのブログには現在、以下のように書かれている。

2013年04月27日
有り難う!


高校生の時に寂しい、死にたいと嘆き、楽器を持って立ち上がった頃から考えると
最後のライブの情景は想像もつかないものでした。

あのステージは私の人生の中で一生の誇りです。
本当に有り難う。


これからも、どんな形でやっていくかも分かりませんが音楽はやっていきたいと思っています。
まだやりきれない気持ちがあります。
心の底から幸せになりたいので都会で生きていきます。


まりな、さとこ 
日本マドンナに関わって下さった皆様
私達の音楽を聞いてくださった皆様
本当に本当に有り難うございました。
またどこかで会いましょう。
ファックフォーエバー!


fuckinpolice at 00:54
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バンドの解散はそのほとんどが、金銭的な理由によるものと言ってよい。プロだから当然といえば当然だが、ミュージシャンとはある種の憧れを集める職業でもあって、こうした解散理由にはひどくがっかりさせられる。たいていの場合、音楽性の違いとか、なんとか、適当にぼかして語られるものだ。
不仲という理由も一般的ではあるが、これもそもそもの原因はバンド内の役割分担に応じたギャラの配分についての不満だろう。

しかし幸か不幸か、日本マドンナは商業的に成功した とは言い難かったし、彼女たち三人は解散した今でも、もちろん仲が良い。まりなのブログには、解散ライヴの前夜、あんなと長時間にわたって電話で話した とある。あんなの最後のブログは、まりなとさとこへの感謝で締めくくられている。
日本マドンナの解散は、金銭的な理由とは全く無縁のものである。そして、これこそが日本マドンナというバンドの特異性を証明している。

日本マドンナの解散劇には、日本の社会が抱えている深刻な問題が投影されていると思う。ツイッターやブログによる匿名の誹謗・中傷が当たり前になった現在、自分の立ち位置を明確にして、自分の意見を発信していくには、よほどの覚悟と精神力が必要である。
(笑) が蔓延し、本気≒カッコ悪い と人々が思うようになって、どれくらい経つのだろう。

あんなはMCの中で “ ( 日本マドンナの ) 最後の方、辛かったんです ” とその心情を吐露している。ポップな路線に転向し、自らを偽りながらバンドを続けていくことは、日本マドンナの場合、ありえなかった。日本マドンナが日本マドンナであり続けるためには、そのアイデンティティを守るためには解散しかなったのである。
無念さもまた、ひとしおだったろう。
アンコール前、最後に歌われた 「 田舎に暮らしたい 」 の “ 幸せになりたいよ ” というリフレインは、正にあんなの心の叫びだった。

日本はいつからこんなに陰険な国になったのだろうと思う。言いたいことは、自由に言いあってこそ議論は潤沢になるのだ。自らが感じている違和感をストレートに表明することが、これほど困難な今の状況は、病的と言わざるを得ない。






パンクとはそうした違和感を対象化して、世の中に爆弾を落としていく音楽だった。多くのパンク バンドが短命だったのは、それを続けていく困難さと、いつの間にか歩みを止めさせてしまう用意周到な社会のシステムのせいである。
こうした逆風の中で、高校生の時にスタートした日本マドンナが、よく4年間も続いたものだと、感心させられる。かのセックス ピストルズの活動期間は、実質、15カ月だったのだ。


それがたとえ蟷螂の斧であり、コップの中の嵐だったとしても、日本マドンナというバンドが存在したことは、この国のロック史に正しく記録されるべきだろう。そして、バンド生命と引き換えに彼女たちから提示された問題は、主語が誰であれ、きちんと自分の問題として答えを用意する必要がある。なぜなら彼女たちは、日本のマドンナなのだから。





『卒業制作』 

1. ラップ

2. 幸せカップルファッキンシット
3. クツガエス
4. 村上春樹つまらない
5. 東京病気女子高生
6. 田舎に暮らしたい






日本マドンナの記念すべきデビュー ミニアルバム。 

日本マドンナは、音楽情報誌 “ ロッキング・オン ” の音楽情報サイト “ RO69 ” が主催するアマチュア アーティストのコンテスト企画 『 RO69 JACK 09/10 』 の推薦枠で、優勝アーティストに選出され、『COUNTDOWN JAPAN 09/10』への出演を果たす。このコンテストの優勝アーティストは “ RO69 ” のインディー レーベル “ JACKMAN RECORDS ” からCDをリリースできた。

“ パンク ロックというのは、そもそもはこういう音楽だった。それを今、鳴らすことができる存在がいる、という事実に、動揺し、感動する ” 兵庫慎司 ( ロッキング・オン/RO69 )
制作サイドのセールス トークであるという点を差し引いても、この惹句はかなり良いところを衝いている。



(日本マドンナ 関連コンテンツ)
# 2013年3月29日更新 いわし亭部長とフランシーヌ千里部員の音楽放談~日本マドンナ ラストラン
# 2013年5月14日更新 2013年4月24日 日本マドンナ解散ライヴ @ 新宿紅布 レポート








2 件のコメント:

  1. おつかれさまでしたぁ。
    ロックバンドが長いこと続けていくということは本当に難しいんだなということは、私も何度となく感じたことはあります。
    この頃の世代の精神的な幼さみたいなところも手伝って苦しい気持ちだったのでしょうかね。
    でも、また違う形で音楽を続けてほしいですね。そこからまた別のしあわせがあると信じたいですね。

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  2. あんな まりな さとこ 彼女たちが稀代のガールズパンク 日本マドンナを経て、次にどのようなバンド活動にたどり着くのか? それはそれで楽しみでもあります。そして、それぞれがそれぞれに腕を磨いて再度、集まる夢の瞬間を楽しみに待ちたいと思います。

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