第6回目 テーマ:『いま、聴いて欲しいこの一枚』 その1 『白呪』
フランシーヌ千里です。きびしい寒さが続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
さて、2013年、明けて1回目の音楽放談です。
今日から新シリーズ: 『いま、聴いて欲しいこの一枚』 をはじめます。
なぜ、こういうテーマを扱うことになったかと言うと… そもそもこの音楽倶楽部発足のきっかけは、いわし亭部長の積年の想い “必ずしも質の高い音楽が、世の中に、広く受け入れられている という訳ではない” という矛盾感にありました。
つまり 「売れている音楽」=「いい音楽」 というわけではない ということで、それでも別にいいのではありますが、もっともっと音楽に関する知識があれば、さらに多様な音楽が、世の中で受け入れられるのでは? そうであってほしい といういわし亭部長の熱い想いがあります。
“マーケットに左右されるのではなく、ひとりひとりがもっと主体的に、聴きたいものを選べるようになれば。そのために、自分にできることは、これまで得た知識や情報を発信することだ” という いわし亭部長のそんな想いに私たちも共鳴して、この倶楽部で活動をしています。
いわし亭部長による “聴いてほしいけれど廃盤になったり、手に入れにくい、などのとっておきの作品” について。今回、いわし亭部長が真っ先に取り上げたのが 「ヨイトマケの唄」 です。2012年末、<紅白歌合戦>でも歌われ、もはや多くの人たちが知っている歌となりましたが、今日、改めて共有するところまで出来るようになるには、何十年もかかったこの歌。ぜひ、いわし亭部長の想いとともにご覧ください。
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77歳にして紅白歌合戦に初出場した美輪明宏が歌った 「ヨイトマケの唄」 は、体調やマイブーム、その他の問題さえなければ、十中八九おそらく挙げるであろう、日本歌謡史においていわし亭が最も好きな楽曲だ。6分弱の大作のため、“歌手一人の持ち時間に制約のある紅白歌合戦では歌いきれない” として、美輪明宏はNHKからのオファーを断り続けてきた。
ステージを終えた美輪明宏は、“観客の一人一人の人生に、自分の歌が染み込んでいくのが分かった。最近は命を捨ててまで、我が子の命を守る無償の愛が、希薄になっている。その無償の愛を伝えたくて歌いました” と語った。
時代が歌を希求したのだ。
ネット上でも反響は大きく、ツイッターでは絶賛のコメントが積み重なり、普段は読むに堪えない 2ちゃんねる ですら紅白のスレッドでは、美輪明宏を褒めたたえるコメントで埋め尽くされた。
“親御さんのいない子供はいない。今、親が子を殺し、子が親を殺すことがよく起きている。一人でも、そういう人がいなくなるように、起こらなくなるようにという曲です”
歌は、時代の空気を呼吸して、生まれる。その意味で、1964年に生まれたこの曲が、これほどまでに絶賛されたのは、残念ながら、今がそういう時代ではないからだ。だからこそ新しい聴き手を獲得し、現代の楽曲として再生したのである。
♪ 苦労 苦労で 死んでった 母ちゃん見てくれ この姿
どんなきれいな唄よりも どんなきれいな声よりも
僕をはげまし慰めた 母ちゃんの唄こそ 世界一 ♪
NHKのシリーズ企画 『その時、歌は生まれた』 でこの 「ヨイトマケの唄」 が取り上げられた時、取材を受けた作曲家 なかにし礼のコメントは圧巻だった。なかにしは、この作品を “日本のあらゆる歌を含めて一番いい歌である” と評し、その根拠を 1 ドラマ性 2 言葉の正確さ 3 場面転換 4 取り上げたテーマ 5 メロディ の5点にわたって述べている。同業者にここまで言わしめてしまうところに、この楽曲の前人未到の境地がある。
その特番の中では、元NET現テレビ朝日のモーニングショーで唄われた際の反響として、約2万通の投書が届いた というエピソードも紹介されている。
美輪さんのリサイタルに接するチャンスがあったなら、迷わずチケットを買って、聴きに行かれた方が良い。1935年生まれの美輪さんも、還暦を越えて久しい。何時、活動をやめてしまうかも分からない。美輪さんが引退してしまう前に、ぜひとも生で 「ヨイトマケの唄」 を経験することをお勧めする。
きっと、あなたの中の何かが変わるだろう。


1. 祖国と女達(従軍慰安婦の唄)
2. 悪魔
3. ボタ山の星
4. ヨイトマケの唄
5. 亡霊達の行進
6. 陽はまた昇る
7. 別れの子守唄
8. 妾のジゴロ
9. あたしはドジな女
10. さいはての海に唄う
11. 星の流れに (ボーナストラック)
12. ミロール (ボーナストラック)
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#2 美輪明宏
#2.1 「 ヨイトマケの唄 」 ~ かつて日本語で歌われた中で最も優れた唄
#2.2 「 愛の讃歌 」 は誰に捧げられたのか?
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